側弯症について

今回は、側弯症という病気についてご紹介させていただきます。 【背骨の構造】 側弯症(背骨が曲がっている/歪んでいる状態)の方は多くいます。人の背骨は、頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎1個、尾骨1個から成り立ち、ブロックみたいに積まれています。“椎間板ヘルニア“で有名な”椎間板“は骨と骨をつなぐクッションです。背骨は正面からみれば、まっすぐです。また、横から見ればS字のように弯曲しています。 【側弯症】 脊柱側弯症(以下;側弯症)は、並び方がおかしくなっている状態です。すなわち、側弯症では背骨を正面から見た場合に、左右に曲がっています。また、側弯症では、横から見た並びにも変化が出る人がいます。健康的な状態であれば、背骨は横から見れば弯曲していると書きましたが、側弯症では、まっすぐになったりします。これは背骨が3次元的になっており、側弯では3次元で骨が歪むためです。 【側弯症の検診】 側弯症が発見されるきっかけの一つが、学校での検診です。検診は1979年度に導入され、側弯症学校検診に代わり2016年度から運動器学校検診が開始されました。側弯症の検診は難しいものではなく、見た目が大切です。自宅でも確認できます。 側弯検診では、①まっすぐ立った状態で背中の歪みを見ます。②立った状態で腰を90度屈めて背中の歪みをみます。具体的には、立ったまま腰を90度屈めると、背中は床に平行になります。その時に背中が歪んでいないかを見ます。側弯症では、ほとんどの場合、右肩甲骨が左に比べて高い位置にあります。歪みがあれば側弯症を疑います。このような場合は整形外科を受診して下さい。学生さんは年に1回、自宅で側弯検診、成人女性は年に1回、乳がん検診をしていただくといいと思います。2つとも、自宅でまずチェックを行うことで早期発見できる可能性があります。 【側弯症の原因;よくいただく質問】 側弯症の原因は不明です。ただ、女児に多いです。側弯症と診断した際に、ご両親から、“姿勢が悪いからでは?”、“重たいかばんを、片側の肩にかけて持っているからでは?”という質問を多くいただきます。現時点では、通学鞄の種類や重さ、寝る姿勢、ベッドか布団か、などで側弯症が生じるという事実はないようです(“ない”ことを証明することは極めて困難ですので、医学的には、“ないよう”、という表現になります)。繰り返しになりますが、過去に様々な調査がなされているにも関わらず、現時点では原因は不明です(すぐに思いつくような姿勢とか鞄、布団などは、“側弯症の原因ではない”可能性が極めて高いということです)。 【側弯症の治療】 曲がりが軽微なものは様子を見ます。ただ、かなり進行する患者さんもいますので、定期通院は必要です。成長が止まると、側弯の進行が止まる患者さんは多くいます。同時に一部の患者さんでは、成長が止まっても進行します。成長が止まっても進行する患者さんの特徴としては、歪みが強い方です。成長期が終わるまでの時間が長い患者さん、つまり低年齢の患者さんは特に注意が必要です。 少し進んでいる患者さんはコルセットを勧めます。生活指導(生活で気を付けるなど)は治療の効果があるか不明です。エビデンスと言って治療効果が証明されているものはコルセットです。できるだけ長い時間の着用を勧めますが、なかなか着用してもらえない所が難しい点です。 かなり進行した患者さんは手術も検討されます。 【当院の対応】 当院はコルセットまでの対応をしております。手術が考えられる患者さんは、当院に来院される脊椎専門医の診察日に予約を取らせていただいたり、側弯を熱心に治療している病院へ紹介しています。 もしよろしければ、下記ホームページも参考にして下さい。 日本側弯症学会のホームページ https://www.sokuwan.jp/

2023.12.05

診察室の窓を二重窓にしました

随分寒くなりました。あと少しで一年で最も昼の時間が短い冬至です。クリニックの建屋西側はどうしても朝が寒く、ある患者さんから“寒い”とコメントを頂きました。その後、YouTubeを見ていたら二重窓をDIYする動画があり、作成してみました。 作成した窓の出来栄えは、まずまずと思っています。ただ、どれくらいの効果があるかはわかりません。省エネや省CO2対策のために二重窓を加速する政策があるそうです(業者さん依頼した場合は市などから補助が出ることもあるそうです)。今回使用した、ポリカーボネイトなどの材料は、石油製品です。10年も使えるものではないそうです。環境に配慮するために、石油製品を使用するという矛盾を感じながら作成していました。節電と材料費のバランス(費用対効果)や本当に環境にやさしいのか、誰が検証しているのだろうと思って作成しました(電気自動車でもしばしば、本当に環境に優しいのか指摘されていますね)。できるだけ長く使用したいと思います。

2023.12.01

当院でのPRP治療は一旦終了になりました

再生医療の一つであるPRP治療を終了することとなりました。現在までに多くの患者様に治療してきました。また、再開することもあるかもしれません。その際には、お知らせ致します。

2023.11.26

院長が執筆したコラムが掲載されました

先日、JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATIONという和文の雑誌から執筆依頼を頂きました。今回の原稿は、依頼原稿と言う形です。依頼原稿は、雑誌が何らかの特集を組む際に、各分野の専門家に執筆を依頼するものです。今回、「脊椎脊髄疾患に対するリハビリテーション~Now and the Future~」というタイトルで、増刊号が発刊されることになりました。その中で、院長には“椎体骨折予防のための骨粗鬆症薬物治療”をテーマとした執筆依頼がありました。 椎体骨折とは、背骨の骨折のことです。今でも“圧迫骨折”という言葉を使用される医師や医療関係者、患者さんがいらっしゃいますが、正しくは“椎体骨折”です。ここでは、椎体骨折として話を進めていきます。 まず、①何もしていないのに骨折した、②転倒して骨折した、③数十センチの高さから転落した、で骨折していれば骨粗しょう症と考えられます。それは、普通、この程度のことでは骨折しないからです。①に関しては驚かれる方も多いでしょうが、椎体骨折の約2/3は、骨折者本人は骨折していることすら気付いていません(いつの間にか骨折していて、何かの機会にレントゲン撮影をすると骨折したことがあると判明します)。“背が3㎝低くなった”、などは椎体骨折のための場合もあります。大腿骨や手首の骨折は、“いつの間にか骨折”していることは考えにくいです。 椎体骨折は、骨折の中でダントツに発生件数の多い部位です。そもそも骨折は、生じやすい年代があります。10月16日のブログでも骨折の順番について書きましたが、その時の表とは異なる表で改めて説明していきます。 まず、50歳頃から増加してくるのは手首です。手首の骨折は転倒して生じます。8-9割の方が女性です。手首を骨折した大半の女性が、“自分はすごい勢いで転倒した”、“全体重がかかった”など、骨折時の外力の強さをアピールします(50代、60代の女性は判で押したように同じことを言われます)。ただ、手首の骨折を生じた方は、将来反対側の手首の骨折を生じたり、椎体骨折や大腿骨骨折を生じやすいです。50代や60代の方で多い骨折は、手首、肋骨、足首、足の甲などです。そして、60歳頃から椎体骨折が本格化します。椎体骨折の増加は他の骨折を圧倒し、70代以降はダントツの件数となります。また、80歳頃からは大腿骨の骨折が増加しました。この頃になると骨盤や上腕骨も増加してきます。個々の方の見ると様々なパターンがありますが、集団で見るとこのような傾向になります。 さて、今回のコラムに話を戻します。コラムでは、重症者向けの治療薬(注射製剤)について解説しています。 椎体骨折に限れば、2カ所以上の骨折や骨折部位の潰れ方がひどいと重症骨粗しょう症と診断されます。これらの骨折の方は、次の骨折を容易にしやすいと考えられるからです。現在利用できる重症骨粗しょう症用の治療薬は, ①テリパラチド製剤,②アバロパラチド製剤(副 甲状腺ホルモン関連蛋白質製剤),③抗スクレロ スチン抗体製剤があります。重症者向けの骨粗しょう症治療薬は全て注射製剤です。内服で開発できれば良いのですが、作用機序などの都合から注射薬で開発する薬剤は多くあります(唾液で分解されてしまう薬剤は注射でしか作れない)。患者さんが嫌がる注射薬が発売に至るためには、内服薬より効果が強いことが必須になります。現在ある骨粗しょう症治療薬も注射薬は内服薬より効果が強いと考えられるものばかりです。なお、時々誤解されている方もいますが、副作用は、必ずしも効果に比例して強くなるわけではありません。②のアバロパラチド製剤(副 甲状腺ホルモン関連蛋白質製剤)は1年以内に販売が開始した製剤です。まだまだ、使用している患者さんは少ないです。ただ、海外では以前より使用が可能で、既に多くの論文が出ています。これらの薬剤について、コラムでは解説しています。どちらが良いかは、患者さんのやりやすさなどによっても異なります。今回のコラムが多くの医療者にとって骨粗しょう症やその治療薬について理解するきっかけになればと考えています。

2023.11.13

腎臓内科の先生と勉強会を開催しました 

骨粗しょう症は大きく、原発性と続発性(二次性)に分かれます。皆さんの身長が異なるように、骨の強さ(骨折しやすさ)は体質により異なります。原発性は、明確な理由はなく骨が弱い状態です。続発性(二次性)は、何か別の病気や理由があって骨が弱い状態です。  続発性(二次性)の代表的な状態は、①ステロイド内服のため、②副甲状腺機能亢進症のため、③不動性のため、④卵巣摘出のため、そして⑤腎臓の機能が悪くなったため、も挙げられます。腎臓が悪い人は多くいます。腎臓が悪いと、それを補うために副甲状腺機能亢進症となってしまいます。その結果、骨粗しょう症が進んでしまいます。腎臓が悪い方は、骨粗しょう症になりやすばかりか、骨粗しょう症の治療で副作用が出やすいのも悩ましいところです。そのため、薬剤選択も制限されます。当院でも、骨粗しょう症の重症度に応じて、より慎重に薬剤選択をしています。今回の勉強会では、腎臓内科の先生の立場からも様々なお話を伺いました。特にカルシウム濃度が高いことが腎臓にとっては問題であることを教えて頂きました。当院では、治療開始前に状態確認を行い、治療開始1ヵ月、その後は4ヵ月ごとに血液検査をしています。ただ、腎臓内科の先生の意見を伺い、一部の薬剤では、腎臓が悪い方では、より丁寧なケアが必要であることを認識しました。   話が変わりますが、本日は関節リウマチの勉強会に出席しました。その勉強会でも、薬物治療時には副作用のケアが特に必要で、そのためには処方医が勉強をする必要があることが話題になっていました。  整形外科は“痛み”と密接に関係している科です。痛み止めの一部は、腎機能へ影響があります。腎臓内科の先生から教えて頂いた腎臓ケアの大切さを念頭に、今後も治療に当たりたいと思います。 

2023.10.21