日本臨床整形外科学会学術集会でセミナーの講師を行いました

千葉県幕張で行われた日本臨床整形外科学会学術集会にて、“骨粗鬆症治療におけるTreatment Gapをなくすために“というタイトルで、骨粗しょう症に関するセミナーの講師を担当しました。本セミナーでは8:00~9:00までの1時間を担当しました。学会の第1会場での講演で、講師に選ばれたことは名誉なことと思っています。座長の先生は、骨粗しょう症でご高名な先生でした。7:30頃に講師控室でセミナー内容や骨粗しょう症治療の問題点などをディスカッションし、座長の先生の知識の深さに感銘を受けました。 講演は朝早い時間にも関わらず、多くの先生方に参加をしていただきました。ありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。60分のセッションでしたので、講演は50分を予定し行いました。50分の講演終了後には質疑応答がありました。数多くの質問を頂きました。9:00からの次のセッションに影響が出てしまわないように、質問者がいらっしゃいましたが終了となってしまいました。活発な議論がないことも多々あるため、会場からの反応があると準備してきて良かったと感じました。 折角なので、講演内容を紹介したいと思います。“Treatment Gap”という言葉があります。和訳すると”治療のギャップ”となります。骨粗しょう症に限らず、病気の予防のために行う治療、例えば、高血圧や糖尿病、高脂血症などは、悪いイベントが生じないために治療を行います。いわば予防です。そのため、治療の効果を実感することは難しいです(イベントが生じないことが治療効果ですので、効果を実感しにくい)。ここに“Treatment Gap”が生じやすい原因の一つがあります。 本セミナーでは ①患者様側の問題で生じるギャップ; 治療の必要性をどうしても感じられない、継続するのが面倒。医療者側の働きかけも大切ですが、時間の制約などもあり限界があります。 ②医療者側の問題で生じるギャップ; 医療者が、治療の必要性がある患者様がいるにも関わらず、それに気づいていない。 ③ガイドラインで生じるギャップ; ガイドラインでは捉えられない状態で治療が漏れてしまう患者様がいるというギャップ。 について解説しました。特に②や③については、医療者側の考え方、理解により、すぐに変えられ、患者様の健康寿命に貢献しますので、時間をかけて解説をしました。それぞれの医師により考え方は違います。聴講して頂いた医師の方々の治療の一助になればと思います。 会場となった幕張メッセです。院長は20年ぶりに来ました。当時は医師2年目で、人工関節に関する発表で訪問しました。 第1会場でしたので収容できる人数も多いです。 発表中の様子です。

2023.07.17

全国講演会で発表しました

コロナによる制限も徐々に解除されています。勉強の場である講演会も、Webもまだまだ多いですが、現地集合のものも徐々に増えてきています。 院長は、年間20回程度の講演会の演者をしています。今回は、m3.comという医師向けのサイトを介した大規模講演会で演者を務めました。今回の勉強会は熊本大学の先生が座長で、私と獨協医科大学の先生が講師となりました。専門の業者さんの協力を得て、全国3カ所から中継でつなぎ講演会を行いました。 獨協大学の先生の発表は非常に勉強になりました。背骨の骨折の治療を保存治療(手術をしない)、手術療法に分けて解説して頂き、治療成績や問題点を解説して頂きました。 私は、骨粗しょう症の診断について、特に重症骨粗しょう症の診断について説明しました。重症骨粗しょう症とは、①骨折を2カ所以上している、②骨折が1ヵ所+骨密度が若い人の65%未満、③骨密度が60%未満、④背骨の骨折をしている人で、潰れ方がひどい等が該当することを伝えました。最近、Imminent Fracture Risk(差し迫った骨折リスク)という言葉が、骨粗しょう症分野で話題となっています。これは、骨折直後に、次の骨折が高確率に生じるという意味です。Imminent Fracture Riskを示す研究結果は、続々と報告されております。そのため骨折直後(1年以内)は、骨粗しょう症を、今までの概念(上述した①~④だけではなく)より重症と考えた方が良い意見もあります。そして、重症骨粗しょう症患者と診断した時には、内服など弱い治療ではなく、最初からガツンと強い治療をして骨折しにくい骨にして、その後内服薬などで地固めをする治療プランが提唱されています。 今回の講演会では3000名弱の医師が視聴されたそうです。少しでも治療のお役に立てればと思います。しばらく講演会や学会発表の予定が続きます。来週には千葉の学会での講演も控えております。またこちらでも報告させていただきます。 会場の風景です

2023.07.09

「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理: 顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」が発表されました。

骨粗鬆症治療において、歯科治療との兼ね合いがしばしば問題となります。歯科受診した際に、“骨粗鬆症治療をしていると歯科治療ができない”と歯科の先生から説明を受けた、という話、あるいは類似した話はほぼ毎日あります。 当院のブログでは、顎骨壊死/顎骨骨髄炎に関する最近の研究の動向などを何度か取り上げました。今回、顎骨壊死検討委員会ポジションペーパーが発表になりましたので、お伝えします。 大きな流れとしては、以前から説明しているように、骨粗鬆症治療について、過度に心配する必要はないという内容に変更になっています。また骨粗鬆症治療薬が病気のメインの原因ではないことや骨粗鬆症治療のメリットも考え全体として治療すべきという流れになっています。 顎骨壊死は、骨粗鬆症治療を受けていない人でも歯周病などを背景に生じることがあります。骨粗鬆症治療薬の中でもビスホスホネート製剤やデノスマブ製剤では注意を要するとういうことになっていました。ただ、院長が過去に発表した論文も一つの契機となり、デノスマブ製剤を止めたりする方が、全体としてリスクは大きいという流れになっていました(今回のポジションペーパーでは、院長が作成した論文も引用されております)。実際に診療している立場では、骨粗鬆症治療に伴う顎骨壊死自体の弊害より、不適切な説明のために治療を止め、その後、骨折を生じることの方が、歯科の先生には失礼ながら問題だと思います(顎骨壊死自体は大変な状態になることがあります。ただ、骨粗鬆症治療薬で生じる顎骨壊死、あるいは重症化する顎骨壊死の頻度が、そこまで心配するほど見合っているのかには疑問があります)。また当院では、心配されている患者様に顎骨壊死の病気の説明をするため、多くの時間をかけています。 顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023の内容を抜粋して紹介します。抜粋箇所は院長の好みですので、切り取りであることを理解して読んでください。略語については()で日本語をつけています。 抜歯のみが顎骨壊死のきっかけではない。 「抜歯をはじめとする侵襲的歯科治療は、従来から MRONJ (薬剤関連性顎骨壊死)発症の最大のイベントとして注視されてきた。しかし抜歯の適応となる重度の歯周病や根尖病変などの歯科疾患の多くは、すでに顎骨に細菌感染を伴っていることが多く、最近では抜歯だけが MRONJ 発症の主たる要因ではないといわれている。本委員会では、すでに抜歯前に潜在的に MRONJ を発症しており、抜歯によって MRONJ が顕在化するケースの存在に注意喚起する。」 p10より 抜歯で顎骨壊死が生じると理解されている先生もおられます。しかし、顎骨壊死は局所の細菌感染症が大きな原因です。そこに抜歯などの処置が加わり顕在化することが想定されています。もちろん、抜歯時に局所細菌感染を生じて、顎骨壊死になる場合もあります。細菌感染が重要であることはこの10年の研究で繰り返し示唆されています。 抜歯前の予防的休薬については、あまり必要性がない。 「現状においては休薬の有用性を示すエビデンスはないことから、委員会として「原則として抜歯時に ARA (ビスホスホネート製剤やデノスマブ製剤)を休薬しないことを提案する」。P15より 現状では、骨粗鬆症治療薬休薬のメリットを示すエビデンス(証拠、根拠)が乏しいことから、過去に提案があった休薬に対しては、むしろ“休薬しないことを提案する”、となっています。骨粗鬆症治療を休薬するデメリットを示す論文もいくつもあることから、根拠に乏しい“抜歯の前に休薬しましょう“という意見は後退しています。 また、抜歯時の予防休薬に関して、ビスホスホネート製剤やデノスマブ製剤が取り上げられていますが、その他の薬剤は大きな話題にもなっていません。「テリパラチド連日製剤が MRONJ の症状を軽減あるいは治癒させるという報告が散見される」とも記載されています。テリパラチド製剤は、顎骨壊死を生じさせるどころか(マイナスになる)、改善する可能性がある(プラスになる)とも記載されています。ところが、日々の診療では、こういった薬剤にも休薬が必要と説明を受けている患者様に会うこともしばしばあり、対応に苦慮しています。 今後も、研究などで新しいデータが出てこれば、治療のあり方は変わっていきます。当院でも情報収集に努めていきたいと思います。歯科の先生方と協力しながら治療に当たりたいと思います。 なお、ブログを読まれている専門職の方については、以下のリンクを貼ります。どなたも読める内容ですので、このブログを契機に一読して頂けましたらと願います。 https://www.jsoms.or.jp/medical/work/guideline/

2023.07.07

整形外科で見る他科疾患について

当院は整形外科ですので、患者様の大半は整形外科が担当する病気をお持ちの方です。と言っても、例えば、“痛みで来たけど、実は別の科で扱う病気だった”や“歩行がしにくくなって受診したけど、実は脳の病気だった”、ということはしばしば経験します。今回は、無症状だったけど、当院で偶然、整形外科以外の病気と気付いた病気について紹介します。 ●原発性副甲状腺機能亢進症 当院では骨粗しょう症治療を熱心にしています。骨粗しょう症の診断の際には、自身の骨折歴の確認や家族の骨折歴の確認、骨密度検査が欠かせません。また血液検査でも骨の状態を把握したりします。その過程で、別の病気があるために骨粗しょう症を発生しやすくなっている、いわゆる二次性骨粗しょう症の確認もしています。副甲状腺機能亢進症は二次性骨粗しょう症を発生させる代表的な病気です。この病気は、人間の首に左右2つずつある副甲状腺の異常で、4つの副甲状腺のどこがおかしくなり、副甲状腺ホルモンの分泌が異常に増えます。その結果、骨が弱くなったり、結石を生じやすくなったり、カルシウム濃度が上がります。血液検査をして偶然カルシウム濃度が高いことに気づく方には、この病気にかかっている人が多くいます。副甲状腺機能亢進症の患者様の中には、副甲状腺ホルモンを異常に分泌する腫瘍を形成している患者様もいます。当院では骨粗しょう症の治療開始時に、カルシウム濃度や骨代謝マーカーの測定をしていますので、この病気に気づきやすくなります。当院では2~3カ月に1名は副甲状腺機能亢進症を疑う患者様を見つけます。当院で発見する場合、無症状の方が多く、内分泌内科に紹介しています。当院で疑った患者様の転帰を調べていると、残念ながら、最終的には手術治療を行うことが多いようです。 ●動脈瘤や動脈瘤解離 大動脈は心臓からでる太い血管です(ホースのようです)。大動脈は樹木のように細かく枝分かれしながら、体のすみずみまで血液を運んでいます。大動脈瘤は、この大動脈(通常は20~25㎜程度)が「こぶ」のように病的にふくらんだ状態(30~40㎜以上)を言います。原因は様々ですが、ひどいと動脈が破裂するために注意を要します。なぜ、動脈瘤が整形外科で見つかるかというと、背骨のレントゲンやMRIを撮影するからです。特にMRIでは血管の太さも測定できるために、動脈の太さが35㎜以上になっていたり、以前に撮影した時よりより動脈瘤が大きくなっている場合は専門医を紹介しています。手術の基準は、施設により異なると思いますが、動脈瘤が大きくなっているものや動脈瘤が40㎜以上になると破裂して死亡するリスクも高まるため、手術も検討されるようです。動脈瘤は年に1名程度、紹介しています。 その他、様々な病気が見つかることがあります。なぜ、何度も骨折するのか、どうしてこういう歩き方をするのか、どうしてこんな症状を訴えるのかなど、疑問に思った時に極力調べたり、整形外科の先生に相談したり、他科の先生に紹介することで、問題を解決できたりします。そのことが学習に繋がります。実は、今回取り扱った副甲状腺機能亢進症は、ある時に疑問に思ったことがあり、教科書を読んでいる中で、血液検査をして、カルシウム濃度が高い人に副甲状腺機能亢進症が多いということを知り、カルシウムが高い患者様を見つけたら、検査を追加するようになりました。その結果、副甲状腺機能亢進症と診断される患者様が増えました。副甲状腺機能亢進症も経験を積むうちに、“こういった患者さんでも疑った方が良い”、という、ノウハウができてきます。今後も、勉強を絶やさず、今気づいていない病気にも気付けるようになりたいと考えています。

2023.05.21

備品紹介

当院は開院し、4年が経過しました。追加した備品も多くありますが、開院時からあるものに関しても傷みもあり、適宜修理や交換してきました。今回はカウンターにある3つの椅子を交換しました。古いものは今後修繕して、再度配置するか思案中ですが、布の張替えにも時間を要すために、新しいものを購入しました。以前のものより座り心地は硬いですが、お手入れがしやすい椅子になりました。 カウンターのコミックスの一部です。スペースの問題もあり、時間の経ったものは別の場所に保管しています。 リハビリ室のスツール(玄関椅子)は破損しましたので、交換しました。安定性のあるものを選びました。 リハビリ室にある小さな子供に人気の玩具です。知的玩具と呼ばれるもので、磁石が中に入っており、想像力を高めるそうです。左のものは以前からあり、お子さんの評判も良く、今回、左の玩具を追加しました。大人気の“ノラネコぐんだん”のボックスに入っています。待ち時間に利用していただき、お子様の発達の一助になればと思っています。 今回は備品の紹介でした。コミックスは患者さんの意見を伺い配置しています。スペースに限りがありますが、また、お話を伺い変更することもあると思います。

2023.05.06