整形外科領域の“がん“について~“希少がん”に関する市民公開講座のご案内~

“がん”は、死亡原因の上位にあがる深刻な病気です。発生しやすい部位には性差があります。死亡者数で見ると、男性は、①気管・気管支及び肺、②胃、③膵臓が多く、女性は、①気管・気管支及び肺、②膵臓、③結腸の順となります(厚生労働省「人口動態統計」2022年)。一方で、罹患数(新たに診断されること)でみると、2019年の統計で、男性は①前立腺、②胃、③大腸、女性は①乳房、②大腸、③結腸の順になります(がん情報サービス)。つまり、がんの発生者数とがんによる死亡者数は、必ずしも一致しないことを示しています。例えば、死亡者数が男女性共に2位の膵臓がんは、罹患数は少ないものの、死亡者数は多く、予後が悪いということになります。がんの性質、治療方法の進歩(完全切除しやすい、化学療法や放射線療法が効きやすい)などが原因で、罹患数と死亡者数には乖離があります。  では、“がん”とは何でしょうか? 絶対的な定義はありませんが、一般的には、①細胞機能に異常をきたし、細胞が無秩序に増殖する、②周囲の組織に広がり(局所浸潤する)、時に発生した場所と異なる部位に類似した細胞の塊を作る(遠隔転移する)、③最終的に体調が悪くなり死亡に至る、などが挙げられます。  発生者数は少ないのですが、整形外科領域でも“がん”はあります。例えば、骨肉腫、軟骨肉腫などです。整形外科領域の“がん”と言いながら、“肉腫”となるのは何故かという所から説明をします。  “がん“には発生母体があります。その発生母体により、”がん”は分類されます。  肉腫は、発生母体が骨、軟骨、筋、脂肪、神経などであるものです。発生母体の特徴を残しながらも、無秩序に増殖したり、周辺の組織を破壊したり、遠隔転移します。整形外科で扱う、肉腫の頻度は低いものの、肉腫の種類は非常に多く、各疾患に分けると、それぞれが極めて少ない状況です。代表的な肉腫である、骨肉腫は主に小児に発生しますが、三重県内の1年での発生者は数名程度です。どのがんでも、治療の改善のために研究を行うのですが、肉腫は、症例数が少ないという意味で研究が行いにくい分野です。このように、がんの中には、発生頻度が少ないものが多くあります。そういったものを“希少がん”と言います。堅苦しい言い方ですが、定義は、「人口10万人あたり6例未満のがん」となります。“希少がん”ですから、社会でみれば死亡者数は少ないのは事実です。ただ、患者さんや家族の立場からすれば、他の“がん”と何ら変わらず、治療への不安、将来への不安や恐怖を抱えます。治療成績を改善するために研究が行われています。ただ、“希少がん”では、一つの治療機関だけでの研究には、“症例数が少ない”という限界もあることが、大きな問題となります。例えば、5人の患者さんの特徴を調べるより、500人の患者さんの特徴を調べた方が、精度が高くなります。そのため、患者さんの同意の上で、治療を行う医療機関が協力してデータベースを作り、全国的あるいは東海地域など地域での調査研究が行われています。  患者さんや家族の側からみると、“希少がん”は情報が少ないことも問題点の一つとして挙げられます。そのため、“希少がん”の治療をしている医療機関などが、市民講座を開いたりしています。ただ、残念ながら、数は多くないかもしれません。今回、2024年2月10日(土)、三重大学医学部付属病院総合がん治療センターが主催で、“希少がん”のついての市民公開講座が、津リージョンプラザ お城ホールで開催されます。当院に外来応援に来ていただいている先生も講演予定です。  “希少がん”について、今回のブログや市民講座で、皆様にとってより良い生活になれば幸いです。院内に、三重大学附属病院より頂いたチラシがありますので希望の方は、お持ち帰りください。また、別の機会にブログでも整形外科領域の“がん”について触れたいと思います。 

2023.12.14

側弯症について

今回は、側弯症という病気についてご紹介させていただきます。 【背骨の構造】 側弯症(背骨が曲がっている/歪んでいる状態)の方は多くいます。人の背骨は、頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎1個、尾骨1個から成り立ち、ブロックみたいに積まれています。“椎間板ヘルニア“で有名な”椎間板“は骨と骨をつなぐクッションです。背骨は正面からみれば、まっすぐです。また、横から見ればS字のように弯曲しています。 【側弯症】 脊柱側弯症(以下;側弯症)は、並び方がおかしくなっている状態です。すなわち、側弯症では背骨を正面から見た場合に、左右に曲がっています。また、側弯症では、横から見た並びにも変化が出る人がいます。健康的な状態であれば、背骨は横から見れば弯曲していると書きましたが、側弯症では、まっすぐになったりします。これは背骨が3次元的になっており、側弯では3次元で骨が歪むためです。 【側弯症の検診】 側弯症が発見されるきっかけの一つが、学校での検診です。検診は1979年度に導入され、側弯症学校検診に代わり2016年度から運動器学校検診が開始されました。側弯症の検診は難しいものではなく、見た目が大切です。自宅でも確認できます。 側弯検診では、①まっすぐ立った状態で背中の歪みを見ます。②立った状態で腰を90度屈めて背中の歪みをみます。具体的には、立ったまま腰を90度屈めると、背中は床に平行になります。その時に背中が歪んでいないかを見ます。側弯症では、ほとんどの場合、右肩甲骨が左に比べて高い位置にあります。歪みがあれば側弯症を疑います。このような場合は整形外科を受診して下さい。学生さんは年に1回、自宅で側弯検診、成人女性は年に1回、乳がん検診をしていただくといいと思います。2つとも、自宅でまずチェックを行うことで早期発見できる可能性があります。 【側弯症の原因;よくいただく質問】 側弯症の原因は不明です。ただ、女児に多いです。側弯症と診断した際に、ご両親から、“姿勢が悪いからでは?”、“重たいかばんを、片側の肩にかけて持っているからでは?”という質問を多くいただきます。現時点では、通学鞄の種類や重さ、寝る姿勢、ベッドか布団か、などで側弯症が生じるという事実はないようです(“ない”ことを証明することは極めて困難ですので、医学的には、“ないよう”、という表現になります)。繰り返しになりますが、過去に様々な調査がなされているにも関わらず、現時点では原因は不明です(すぐに思いつくような姿勢とか鞄、布団などは、“側弯症の原因ではない”可能性が極めて高いということです)。 【側弯症の治療】 曲がりが軽微なものは様子を見ます。ただ、かなり進行する患者さんもいますので、定期通院は必要です。成長が止まると、側弯の進行が止まる患者さんは多くいます。同時に一部の患者さんでは、成長が止まっても進行します。成長が止まっても進行する患者さんの特徴としては、歪みが強い方です。成長期が終わるまでの時間が長い患者さん、つまり低年齢の患者さんは特に注意が必要です。 少し進んでいる患者さんはコルセットを勧めます。生活指導(生活で気を付けるなど)は治療の効果があるか不明です。エビデンスと言って治療効果が証明されているものはコルセットです。できるだけ長い時間の着用を勧めますが、なかなか着用してもらえない所が難しい点です。 かなり進行した患者さんは手術も検討されます。 【当院の対応】 当院はコルセットまでの対応をしております。手術が考えられる患者さんは、当院に来院される脊椎専門医の診察日に予約を取らせていただいたり、側弯を熱心に治療している病院へ紹介しています。 もしよろしければ、下記ホームページも参考にして下さい。 日本側弯症学会のホームページ https://www.sokuwan.jp/

2023.12.05

診察室の窓を二重窓にしました

随分寒くなりました。あと少しで一年で最も昼の時間が短い冬至です。クリニックの建屋西側はどうしても朝が寒く、ある患者さんから“寒い”とコメントを頂きました。その後、YouTubeを見ていたら二重窓をDIYする動画があり、作成してみました。 作成した窓の出来栄えは、まずまずと思っています。ただ、どれくらいの効果があるかはわかりません。省エネや省CO2対策のために二重窓を加速する政策があるそうです(業者さん依頼した場合は市などから補助が出ることもあるそうです)。今回使用した、ポリカーボネイトなどの材料は、石油製品です。10年も使えるものではないそうです。環境に配慮するために、石油製品を使用するという矛盾を感じながら作成していました。節電と材料費のバランス(費用対効果)や本当に環境にやさしいのか、誰が検証しているのだろうと思って作成しました(電気自動車でもしばしば、本当に環境に優しいのか指摘されていますね)。できるだけ長く使用したいと思います。

2023.12.01

当院でのPRP治療は一旦終了になりました

再生医療の一つであるPRP治療を終了することとなりました。現在までに多くの患者様に治療してきました。また、再開することもあるかもしれません。その際には、お知らせ致します。

2023.11.26

院長が執筆したコラムが掲載されました

先日、JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATIONという和文の雑誌から執筆依頼を頂きました。今回の原稿は、依頼原稿と言う形です。依頼原稿は、雑誌が何らかの特集を組む際に、各分野の専門家に執筆を依頼するものです。今回、「脊椎脊髄疾患に対するリハビリテーション~Now and the Future~」というタイトルで、増刊号が発刊されることになりました。その中で、院長には“椎体骨折予防のための骨粗鬆症薬物治療”をテーマとした執筆依頼がありました。 椎体骨折とは、背骨の骨折のことです。今でも“圧迫骨折”という言葉を使用される医師や医療関係者、患者さんがいらっしゃいますが、正しくは“椎体骨折”です。ここでは、椎体骨折として話を進めていきます。 まず、①何もしていないのに骨折した、②転倒して骨折した、③数十センチの高さから転落した、で骨折していれば骨粗しょう症と考えられます。それは、普通、この程度のことでは骨折しないからです。①に関しては驚かれる方も多いでしょうが、椎体骨折の約2/3は、骨折者本人は骨折していることすら気付いていません(いつの間にか骨折していて、何かの機会にレントゲン撮影をすると骨折したことがあると判明します)。“背が3㎝低くなった”、などは椎体骨折のための場合もあります。大腿骨や手首の骨折は、“いつの間にか骨折”していることは考えにくいです。 椎体骨折は、骨折の中でダントツに発生件数の多い部位です。そもそも骨折は、生じやすい年代があります。10月16日のブログでも骨折の順番について書きましたが、その時の表とは異なる表で改めて説明していきます。 まず、50歳頃から増加してくるのは手首です。手首の骨折は転倒して生じます。8-9割の方が女性です。手首を骨折した大半の女性が、“自分はすごい勢いで転倒した”、“全体重がかかった”など、骨折時の外力の強さをアピールします(50代、60代の女性は判で押したように同じことを言われます)。ただ、手首の骨折を生じた方は、将来反対側の手首の骨折を生じたり、椎体骨折や大腿骨骨折を生じやすいです。50代や60代の方で多い骨折は、手首、肋骨、足首、足の甲などです。そして、60歳頃から椎体骨折が本格化します。椎体骨折の増加は他の骨折を圧倒し、70代以降はダントツの件数となります。また、80歳頃からは大腿骨の骨折が増加しました。この頃になると骨盤や上腕骨も増加してきます。個々の方の見ると様々なパターンがありますが、集団で見るとこのような傾向になります。 さて、今回のコラムに話を戻します。コラムでは、重症者向けの治療薬(注射製剤)について解説しています。 椎体骨折に限れば、2カ所以上の骨折や骨折部位の潰れ方がひどいと重症骨粗しょう症と診断されます。これらの骨折の方は、次の骨折を容易にしやすいと考えられるからです。現在利用できる重症骨粗しょう症用の治療薬は, ①テリパラチド製剤,②アバロパラチド製剤(副 甲状腺ホルモン関連蛋白質製剤),③抗スクレロ スチン抗体製剤があります。重症者向けの骨粗しょう症治療薬は全て注射製剤です。内服で開発できれば良いのですが、作用機序などの都合から注射薬で開発する薬剤は多くあります(唾液で分解されてしまう薬剤は注射でしか作れない)。患者さんが嫌がる注射薬が発売に至るためには、内服薬より効果が強いことが必須になります。現在ある骨粗しょう症治療薬も注射薬は内服薬より効果が強いと考えられるものばかりです。なお、時々誤解されている方もいますが、副作用は、必ずしも効果に比例して強くなるわけではありません。②のアバロパラチド製剤(副 甲状腺ホルモン関連蛋白質製剤)は1年以内に販売が開始した製剤です。まだまだ、使用している患者さんは少ないです。ただ、海外では以前より使用が可能で、既に多くの論文が出ています。これらの薬剤について、コラムでは解説しています。どちらが良いかは、患者さんのやりやすさなどによっても異なります。今回のコラムが多くの医療者にとって骨粗しょう症やその治療薬について理解するきっかけになればと考えています。

2023.11.13
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