整形外科領域の“がん“について~“希少がん”に関する市民公開講座のご案内~

ブログ 2023年12月14日

“がん”は、死亡原因の上位にあがる深刻な病気です。発生しやすい部位には性差があります。死亡者数で見ると、男性は、①気管・気管支及び肺、②胃、③膵臓が多く、女性は、①気管・気管支及び肺、②膵臓、③結腸の順となります(厚生労働省「人口動態統計」2022年)。一方で、罹患数(新たに診断されること)でみると、2019年の統計で、男性は①前立腺、②胃、③大腸、女性は①乳房、②大腸、③結腸の順になります(がん情報サービス)。つまり、がんの発生者数とがんによる死亡者数は、必ずしも一致しないことを示しています。例えば、死亡者数が男女性共に2位の膵臓がんは、罹患数は少ないものの、死亡者数は多く、予後が悪いということになります。がんの性質、治療方法の進歩(完全切除しやすい、化学療法や放射線療法が効きやすい)などが原因で、罹患数と死亡者数には乖離があります。 

では、“がん”とは何でしょうか? 絶対的な定義はありませんが、一般的には、①細胞機能に異常をきたし、細胞が無秩序に増殖する、②周囲の組織に広がり(局所浸潤する)、時に発生した場所と異なる部位に類似した細胞の塊を作る(遠隔転移する)、③最終的に体調が悪くなり死亡に至る、などが挙げられます。 

発生者数は少ないのですが、整形外科領域でも“がん”はあります。例えば、骨肉腫、軟骨肉腫などです。整形外科領域の“がん”と言いながら、“肉腫”となるのは何故かという所から説明をします。 

“がん“には発生母体があります。その発生母体により、”がん”は分類されます。 

肉腫は、発生母体が骨、軟骨、筋、脂肪、神経などであるものです。発生母体の特徴を残しながらも、無秩序に増殖したり、周辺の組織を破壊したり、遠隔転移します。整形外科で扱う、肉腫の頻度は低いものの、肉腫の種類は非常に多く、各疾患に分けると、それぞれが極めて少ない状況です。代表的な肉腫である、骨肉腫は主に小児に発生しますが、三重県内の1年での発生者は数名程度です。どのがんでも、治療の改善のために研究を行うのですが、肉腫は、症例数が少ないという意味で研究が行いにくい分野です。このように、がんの中には、発生頻度が少ないものが多くあります。そういったものを“希少がん”と言います。堅苦しい言い方ですが、定義は、「人口10万人あたり6例未満のがん」となります。“希少がん”ですから、社会でみれば死亡者数は少ないのは事実です。ただ、患者さんや家族の立場からすれば、他の“がん”と何ら変わらず、治療への不安、将来への不安や恐怖を抱えます。治療成績を改善するために研究が行われています。ただ、“希少がん”では、一つの治療機関だけでの研究には、“症例数が少ない”という限界もあることが、大きな問題となります。例えば、5人の患者さんの特徴を調べるより、500人の患者さんの特徴を調べた方が、精度が高くなります。そのため、患者さんの同意の上で、治療を行う医療機関が協力してデータベースを作り、全国的あるいは東海地域など地域での調査研究が行われています。 

患者さんや家族の側からみると、“希少がん”は情報が少ないことも問題点の一つとして挙げられます。そのため、“希少がん”の治療をしている医療機関などが、市民講座を開いたりしています。ただ、残念ながら、数は多くないかもしれません。今回、2024年2月10日(土)、三重大学医学部付属病院総合がん治療センターが主催で、“希少がん”のついての市民公開講座が、津リージョンプラザ お城ホールで開催されます。当院に外来応援に来ていただいている先生も講演予定です。 

“希少がん”について、今回のブログや市民講座で、皆様にとってより良い生活になれば幸いです。院内に、三重大学附属病院より頂いたチラシがありますので希望の方は、お持ち帰りください。また、別の機会にブログでも整形外科領域の“がん”について触れたいと思います。