骨粗しょう症のエキスパート向けの勉強会に参加しました
こんにちは。
お盆になりますが、院長である私は骨粗しょう症のエキスパート向けの勉強会に参加しました。院長は、年に数回、東京や大阪で開催される勉強会に参加します。今回の勉強会が開催された理由の一つは、骨粗鬆症のガイドラインが改訂になったことです。今回、10年ぶりに、“骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版” が改訂されました。私が骨粗しょう症に興味を持ちだして、3代目のガイドラインになります。
ガイドラインは、その時点でわかっていることに関して、様々な角度から記載されています。そして、標準的な・普遍性の高い・妥当な内容が記載されています。3代目のガイドラインですが、特に今回は10年という期間があり、内容も様々な変更点がありました。
勉強会でも、作成に関わった先生が発表・解説、重要な変更点について取り上げられていました。そのうちの一つは、治療薬選択に関わるものです。この10年で、薬物治療に劇的な進歩がありました。特に、抗スクレロスチン製剤という新たな作用機序の薬剤の登場、テリパラチド週2製剤、アバロパラチドという従来の薬に類似しているもののより治療しやすい、あるいは、効果が高まっている可能性がある薬剤の登場です。これらは注射製剤です。つまり注射製剤が骨粗しょう症治療を更に発展させてきました。それに伴い、骨粗しょう症患者さんを、重症と非重症と考える考え方が強くなってきていると思います(院長の感想です)。注射製剤は使用期限が決められているものが多く、それに伴い、治療薬をどういう順番で使用するのがより効果的なのかと言うことが、特にこの数年研究されてきています。本邦からも世界の骨粗しょう症治療に影響を与える重要な研究成果が多く報告されています。私自身はそういった論文作成に関係していませんが、知り合いの先生が素晴らしい論文を発表しているのを見ると、非常にうれしくなります。またそういった研究を私もしていけたらと思います。
最近、”Imminent fracture risk(差し迫った骨折リスク)”、“Anabolic first(骨形成促進剤をまず使用すると解釈します)”という言葉が、骨粗しょう症治療において流行しています。
まず、“Anabolic first(骨形成促進剤をまず使用すると解釈します)”について触れたいと思います。上述した、“治療薬をどういう順番で使用するのがより効果的なのか”という研究の結果を受けて重要な言葉になっています。
これは、治療薬の使用順番が、どのような違いになるのかを示した論文のデータです。水色と黄色は2つのお薬の使う順番が変わっただけです。2剤の使用期間はともに24ヵ月で、前治療期間は48ヵ月になります。最終的な骨密度の増加効果が、水色は18.3%、黄色は14.0%になっています。特に黄色は、24ヵ月での薬剤切り替え直後に骨密度が一過性に低下するという時期があります。この試験はDATA switch試験と呼ばれ、発表された当時、骨粗しょう症の専門の先生にとっては衝撃的なデータで、私は“やっぱりこうなるのね“と思いました。DATA switch試験は骨粗しょう症治療に極めて重要な情報をもたらした、いわば金字塔のような試験です。その後も、類似した試験がいくつかあり(DATA switch試験ほど厳格に管理された試験はなかなか難しく、多くは臨床での観察試験が中心です)、さらには、2剤を繋いで使用して3年、あるいは4年間でどれ位、骨密度の増加が見込まれるかに関するデータもいくつか報告されてきています。これは最近の論文の流行りのテーマの一つです。
これらの研究結果を踏まえて、骨形成促進剤と言われるグループのお薬を、重症者にはまず使用した方が良いという考えが定着しつつあります(専門医では定着しているといった方が良いかもしれません)。こういった考えが、“Anabolic first”です。参加した勉強会でも、この点が盛んに発表されていました。
これは昨年、米国骨代謝学会と米国骨粗鬆症財団から発表されたポジションステートメントと呼ばれるものです。この論文、この図は世界中の骨粗しょう症治療の指針になっています。そして、今回の“骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版”にも登場しています。
字が細かくて読みにくいですが、骨粗しょう症患者さんを3つのグループに分けています。①骨折したことがない人、②2年以上前の骨折者、③2年以内の骨折者や2つ以上の骨折歴のある人です。特に③は重症で、”Imminent fracture risk(差し迫った骨折リスク)”と定義しています。また、②に関しても、骨折部位が、股関節・骨盤・背骨の骨折であれば、重症と評価して骨形成促進薬を第1選択としています。
本ブログでも、骨密度も大切ですが、それ以上に骨折したことがある、骨折回数が大切と繰り返し説明しましたが、この図でも同様の内容になると思います。骨密度も大切とされていますが、①のグループの人、あるいは②のグループの人の一部で、評価に登場します(③のグループの人は骨密度の記載すら出てこないです)。この図の通りには、日本の保険診療の都合もありできませんが、当院では、こういうことも踏まえて治療に当たってきました。
こういった図が作られたり、“骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版” にもすぐに引用されるのには、明確な理由があり、それは、この10年間でいくつかの治療薬が登場し、それに対して研究が行われ、明確な根拠が出来ているからです。今回のブログでは、この辺で終了しますが、日々、治診断・治療は進歩しています。全ての分野に詳しくなることなど、とてもできませんが、少なくとも骨粗しょう症分野の専門家として、皆様に最善の治療が提供できるように努めていきます。よろしくお願いします。