整形外科で見る他科疾患について

ブログ 2023年5月21日

当院は整形外科ですので、患者様の大半は整形外科が担当する病気をお持ちの方です。と言っても、例えば、“痛みで来たけど、実は別の科で扱う病気だった”や“歩行がしにくくなって受診したけど、実は脳の病気だった”、ということはしばしば経験します。今回は、無症状だったけど、当院で偶然、整形外科以外の病気と気付いた病気について紹介します。

●原発性副甲状腺機能亢進症

当院では骨粗しょう症治療を熱心にしています。骨粗しょう症の診断の際には、自身の骨折歴の確認や家族の骨折歴の確認、骨密度検査が欠かせません。また血液検査でも骨の状態を把握したりします。その過程で、別の病気があるために骨粗しょう症を発生しやすくなっている、いわゆる二次性骨粗しょう症の確認もしています。副甲状腺機能亢進症は二次性骨粗しょう症を発生させる代表的な病気です。この病気は、人間の首に左右2つずつある副甲状腺の異常で、4つの副甲状腺のどこがおかしくなり、副甲状腺ホルモンの分泌が異常に増えます。その結果、骨が弱くなったり、結石を生じやすくなったり、カルシウム濃度が上がります。血液検査をして偶然カルシウム濃度が高いことに気づく方には、この病気にかかっている人が多くいます。副甲状腺機能亢進症の患者様の中には、副甲状腺ホルモンを異常に分泌する腫瘍を形成している患者様もいます。当院では骨粗しょう症の治療開始時に、カルシウム濃度や骨代謝マーカーの測定をしていますので、この病気に気づきやすくなります。当院では2~3カ月に1名は副甲状腺機能亢進症を疑う患者様を見つけます。当院で発見する場合、無症状の方が多く、内分泌内科に紹介しています。当院で疑った患者様の転帰を調べていると、残念ながら、最終的には手術治療を行うことが多いようです。

●動脈瘤や動脈瘤解離

大動脈は心臓からでる太い血管です(ホースのようです)。大動脈は樹木のように細かく枝分かれしながら、体のすみずみまで血液を運んでいます。大動脈瘤は、この大動脈(通常は20~25㎜程度)が「こぶ」のように病的にふくらんだ状態(30~40㎜以上)を言います。原因は様々ですが、ひどいと動脈が破裂するために注意を要します。なぜ、動脈瘤が整形外科で見つかるかというと、背骨のレントゲンやMRIを撮影するからです。特にMRIでは血管の太さも測定できるために、動脈の太さが35㎜以上になっていたり、以前に撮影した時よりより動脈瘤が大きくなっている場合は専門医を紹介しています。手術の基準は、施設により異なると思いますが、動脈瘤が大きくなっているものや動脈瘤が40㎜以上になると破裂して死亡するリスクも高まるため、手術も検討されるようです。動脈瘤は年に1名程度、紹介しています。

その他、様々な病気が見つかることがあります。なぜ、何度も骨折するのか、どうしてこういう歩き方をするのか、どうしてこんな症状を訴えるのかなど、疑問に思った時に極力調べたり、整形外科の先生に相談したり、他科の先生に紹介することで、問題を解決できたりします。そのことが学習に繋がります。実は、今回取り扱った副甲状腺機能亢進症は、ある時に疑問に思ったことがあり、教科書を読んでいる中で、血液検査をして、カルシウム濃度が高い人に副甲状腺機能亢進症が多いということを知り、カルシウムが高い患者様を見つけたら、検査を追加するようになりました。その結果、副甲状腺機能亢進症と診断される患者様が増えました。副甲状腺機能亢進症も経験を積むうちに、“こういった患者さんでも疑った方が良い”、という、ノウハウができてきます。今後も、勉強を絶やさず、今気づいていない病気にも気付けるようになりたいと考えています。