雪と転倒、骨折

ブログ 2023年1月31日

1月25日は10年に一度とも言われる寒波でした。気象庁の発表によると、25日は桑名市の最低気温マイナス4.0度、最高気温0.6度で、平均気温はマイナス2.3度でした。雪もずいぶん降りました。当院は、桑名市の西寄りにあり、数㎝の積雪になりました。また、菰野町や藤原町などは、報道や患者様から伺うと随分な積雪だったそうです。

当院では25日早朝から雪かきを行いました。午前6時前には始まりましたが、午前6時にも関わらず、出勤のためかクリニック東側の道路は渋滞になっておりました。

1月25日朝の窓ガラスです。なかなか見られないのですが雪の結晶がきれいですね。
1月26日の様子です。25日の日中に雪はある程度溶けましたが、溶けた水が凍結しました。

雪になると、転倒し骨折する人が増えます。雪が降ると手首の骨折が増えます。今回の雪でも手首の骨折の方が来院されました。ここからは、医学の話になります。昨年、2022 FIFA ワールドカップでは、素晴らしいプレーが見られ、観戦された方は多いのではと思います。サッカーの試合では、しばしば転倒する選手がいます。1試合にのべ何回くらい転倒するのかわかりませんが、1試合戦って転倒をしていない選手の方が少ないのではと思います。転倒する選手は、大抵は手をついてダーメージを少なくしようとします。試合中に骨折して運ばれていく選手はほとんど見ません。先程、雪が降ると手首の骨折が増えると述べました。さらに情報を追加すると、雪の日に転倒して手首の骨折をされる方の大半は女性で、50代、60代が中心です。明らかな性別差や年齢に偏りがあります。雪の日になると50代や60代の女性に不幸が起こるわけではなく、平時でも手首の骨折をされる人は、同性代の女性が多いです。ただ、70代の方は雪の日には外出する頻度が少ないためだと思いますが、平時よりは雪の日の骨折は少ない印象です。

手首の骨折は、“(骨粗しょう症の)お知らせ骨折”とも呼ばれています。初めて骨折する部位として有名です。因みに初回の骨折部位として多いのは、肋骨や足首も挙げられます。これらは比較的早い時期から骨折リスクが高まります。手首については、論文でも、わざわざ50-60歳代に好発すると書かれています。手首の骨折は、一般の方や医療関係者も誤解している方が多いので特徴を書きます。まず、手首の骨折の方は、自分自身はすごい勢いで転倒したために骨折したと考えがちです。しかし、現実的に、サッカーの試合中に勢いよく転倒した選手が骨折することは非常に少なく、骨折する人の多くは女性で50-70歳代であるとの特徴があります。誤解しやすい点に“骨密度が高値の人が多い”ことも挙げられます。Treatment gap(治療すべき人と実際に治療している人の差)という言葉があります。手首の骨折でしばしば指摘されています。転倒して手首の骨折をした場合、他の病気から骨が弱くなっているなど特殊のケースを除いて、“転倒して手首の骨折”という事実で、次の骨折予防のために骨粗しょう症治療をしましょうとなっています。その一方、骨密度を測定して高値になると、その他の評価を忘れてしまうことが多くあります。これは世界中で見られる状態のようで、国際的に権威あるKanis先生の論文でも指摘されています(Kanis JA et al. Osteoporosis Int 2023 34:1-9)。また股関節周囲、背骨、手首の骨折を生じている人は、他部位の骨折確率が高いことが分かっており、Red flag(危険信号)であるとも言われています(Leboff M.S et al. Osteoporosis Int 2022 33:2049-2102)。

当院では、手首の骨折の方には特に骨粗しょう症治療を勧めていますが、ご自身の転倒は“たまたま”と思われる方が多く、治療に至らない方も多くいます。また他の先生に相談して、骨密度が高いから大丈夫と言われる方も、何人もいらっしゃいました。その方が骨折しなければいいのですが、骨折リスクの高い人(その代表が骨折したことがある人です)に対して、治療を行うのは医療経済的には、医療費の削減にもつながるという趣旨の研究結果は過去に多くあります。もし、手首の骨折をした方で、無治療の方がおれば治療を検討して下さい。ただ、小児の方は治療対象外です。

最後になりますが、お願いがあります。平時より当院並びにモール駐車場を通り抜け目的に利用される方がいらっしゃいます。積雪のある日は、暗い時間から雪かきをしています。雪かき中は、職員は周辺を見る余裕もなく、視界も悪く、また平時でいう通行路も作業をしています。通り抜けする車があることを想定していません。雪の日に通り抜けをされますと、通り抜けするドライバーもまさか人がいるとも思わず、雪かき中の職員と事故の可能性が高く危険です。駐車場は道路ではなく私有地であることも併せてご理解いただき、どうぞおやめになってください。