重症骨粗しょう症向けの治療薬イベニティ®の使用状況について

ブログ 2024年1月21日

重症骨粗しょう症者向けの治療薬の一つに、イベニティ®という注射剤があります。この薬は月に1回、両腕に1本ずつ注射します。12回の治療で1クールは終了で、その後は、ほかの薬剤で継続治療をします。時々、継続治療を嫌がられる方もいますが、薬の治療は一生続くわけではないので、何らかの薬剤で治療した方が良いです。

イベニティ®は、2019年3月に世界で初めて日本で使用が開始されました。実臨床でも発売前の多くの臨床試験と同じく、優れた骨密度増加効果が報告されています。院長の実感として、本当に、すごい骨密度増加効果です。当院でも重症骨粗しょう症患者さんに使用しました。今週で当院でのイベニティ®の通算使用実績が2,000本になりました。病院ですとはるかに多くの使用実績があると思いますが、クリニックでは全国的に見ても多い方だと思います。三重県内のクリニックでは、恐らく最も多く使用していると思います。当院は骨粗しょう症治療を熱心にしていますので、重症骨粗しょう症患者さんも多くいます。イベニティ®以外の重症骨粗しょう症治療薬も軽症者向けの内服薬も、三重県内で最も多く使用しているクリニックだと思います。イベニティ®で、どれだけの骨折が予防できたのか知る方法はないですが、きっと多くの骨折が予防できたのだろうと思っています。

今までに何度もお話しましたが、重症骨粗しょう症の患者さんは以下のような人が該当します。

・2ヵ所以上の骨折をしたことがある人(特に、手首、背骨、大腿骨)

・背骨の骨折の場合、潰れ方がひどい人

・骨折を1ヵ所していて、骨密度が若い人の平均に比べて65%未満の人

・骨密度が若い人の平均に比べて60%未満の人

骨密度検査には注意点があります。骨密度検査を受けて自身の骨密度が、若い人の平均に比べて120%など、高値になり喜ばれる方がいます。骨密度検査は、評価にコツが要ります。骨密度を測定する世代の方が(検査を受ける方は50歳以降の方が多いと思います)、若い人より元気な数値が出ている段階で、何かおかしいのでは?と思う考え方が大切です。例えば、50歳を過ぎて、若い人より肌がきれい、若い人より早く走れる、残念ながらそういったことは生じないと思います。このことは理解して頂けると思います。それと同じように、骨だけが年をとっても若い人より元気なんて考えにくいことです。骨密度が異常に高い人には、測定している骨に変形があったりして、骨密度が見かけ上、高く見えているだけです。例えば、腰椎で骨密度を測定した場合、腰椎の変形、腰椎近くにある大動脈に異常があることが多いです。また腰椎が骨折するとかえって骨密度は高くなるというおかしな現象が生じます。骨がつぶれると骨密度が高くなります。パンをつぶすと固くなるのと同じ原理です。

骨密度検査は大切な検査ですが、骨折の実績の方が将来の骨折予測に大切です。骨粗しょう症治療のマニュアルにも、まず、“背骨の骨折か大腿骨の骨折をしたことがあるか”、次に、“手首などほかの部位が転倒などで骨折をしたことがあるか”、その次に、骨密度を評価するという順番になっています。このことからも、骨折の実績>骨密度 という重要さの順番があることがわかります。

骨粗鬆症治療の薬物治療開始基準

当院では、問診、背骨のレントゲン、骨密度検査度を行い、それぞれの方の骨の状態をできるだけ正確に評価します。もし、希望の方がいらしたらご相談下さい。