オスタバロ

ブログ 2023年4月30日

2023年1月にアバロパラチド酢酸塩(商品名;オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg、以下オスタバロ®)が発売になりました。この薬剤は、ヒト副甲状腺ホルモン関連タンパク質の一つで、以前から販売されているテリパラチド製剤と類似した特徴のあるお薬です。

オスタバロ®の優れた治療成績は2016年にはJAMAという雑誌に報告されております(Miller PD et al. JAMA 2016)。また、2022年にはJCEMという雑誌に、日本人を対象とした試験結果も掲載されています(Matsumoto T et al. JCEM 2022)。非常に優れた治療効果があります。

オスタバロ®は、自己注射製剤です。テリパラチドと呼ばれる製剤も自己注射製剤です。保険での適応は“骨折のリスクの高い骨粗鬆症(いわゆる重症骨粗しょう症)”。重症骨粗しょう症と考えられる状態の代表例を挙げると、

・人生で転倒や低い高さからの転落を契機に生じた骨折が2ヵ所以上ある(打ち方が悪かったなどは基本的に考慮しません)

・転倒や低い高さからの転落を契機に生じた骨折が1ヵ所+骨密度がYAM(若い人との比較)で65%未満

・背骨の骨折で、その潰れ方がひどい

・骨密度がYAM60%未満

などです。

ただ、最近では、骨折リスクに時間軸も取り入れる考え方が導入されつつあります。骨折後1年以内や2年以内に再度骨折する可能性が高いことを結論付ける報告が度々されています。そのため、骨折後の1-2年以内は危険なので、骨折直後には、より強い治療をしましょうという考えです。

オスタバロ®は18ヵ月の治療期間が決められており、それ以降は他剤での治療継続が必要です。治療をやめると、しばらくすると治療効果は消えてしまいます。これは、オスタバロ®に限らず、骨粗しょう症の他の薬剤でも、あるいは骨粗しょう症以外の薬剤でも同じです。治療効果は一生続くわけではありません。

当院では、重症骨粗しょう症患者さんには重症骨粗しょう症用の薬剤を説明しています。現在、発売されている重症骨粗しょう症向けの薬剤は、全て注射製剤です。重症骨粗しょう症の患者様に重症骨粗しょう症向けの注射製剤を勧めると、患者様から、“内服では駄目なのか?”という質問をほぼ毎回頂きます。私も注射は嫌いですので、内服と注射の効果が同等であれば、内服薬の方がはるかに利便性は高く、一般的に安価ですので内服薬を勧めます。現時点では、残念ながら、治療効果は注射薬の方が勝っています。今回案内したオスタバロ®も含め、将来これを凌駕する、あるいは凌駕しなくとも同等の内服薬が、より安価に発売されれば、既存の注射薬の大半は市場からの撤退を迫られると思います。実際、他領域の薬剤で、効果の強い内服薬が発売され、注射薬の販売が終了しているものは多くあります。自己注射製剤が販売されている理由は、自己注射でないとできないからです。テリパラチド製剤やオスタバロ®はこまめに注射での刺激が必要で、そのため自宅などで行って頂く必要があります。オスタバロ®は、販売されて間もないですが、非常に優れた骨折予防効果や骨密度増加効果が明らかとなっており、既に海外を中心に治療成績についての報告が豊富にあります。私自身も以前からオスタバロ®に関する論文を読み、薬理作用、効果や副作用については把握しております。

当院では、骨粗しょう症治療は特に熱心にしております。もし、記事を読んで、ご自身が重症骨粗しょう症に該当しており、薬剤について相談があればお越しください。