乳癌と骨粗しょう症をテーマにした勉強会に参加しました

ブログ 2022年11月19日

院長である私は、年に20回程度、依頼を受けて講演をしています。主に骨粗しょう症についてです。整形外科や内科の先生や医療スタッフを対象に骨粗しょう症の診断や治療方法などについて説明しています。依頼して頂く際に、メーカーから参加者の概要や講演会の趣旨を伺い、内容を変更しています。今回は乳がん治療に取り組む先生方、整形外科の先生、薬剤師さん、その他医療スタッフさんを対象に勉強会がありました。

乳癌と骨粗しょう症どのように関係があるの?と思うかもしれません。乳癌の多くは、エストロゲンという女性ホルモンが、進行に関係しています。こういった乳癌のことをエストロゲン受容体陽性乳癌(ER陽性乳癌)といいます。ER陽性乳癌では、エストロゲンの働きを弱めることで乳癌の治療を行います。エストロゲンの働きが弱まることは、乳癌には良い効果がありますがその一方、エストロゲンは骨の強度を維持するために必要なものですので骨粗しょう症が進みやすくなります。そのため、ER陽性乳癌では骨粗しょう症へのケアも大切になります。私自身は乳癌の専門家ではないので乳癌治療はわかりませんが、今回の講演会を通して乳癌について少し学びました。最近はER陽性乳癌が増加しているそうです。私からは骨粗しょう症の診断には骨密度値だけではなく、骨折歴やその他いろいろな要因を評価することが大切であることを説明しました。ブログでも再三述べているのですが、骨密度検査は骨折のしやすさを予想する一つの方でしかありません。将来骨折しやすいかどうかを予想する際に、今までに骨折を経験したかどうかは極めて大切な情報です。1回骨折した人は1回も骨折していない人より明らかに骨折しやすいことがわかっています。また①2回骨折した人は1回の骨折の方より、②3回骨折した人は2回の骨折した人より、③4回骨折した人は3回の骨折した人より骨折しやすいです。同じ人に骨折が集中することを“骨折のドミノ“、”骨折の連鎖“と呼びます。

私の講演後に、乳癌の専門医で骨粗しょう症にも精通している四日市市の総合病院の先生が講演をされました。様々な内容について丁寧に解説して頂きました。その中で、アロマターゼ阻害剤(AI)投与に伴い骨密度が低下していくことや、評価を行い適切に骨粗しょう症の治療を始めていくことの大切さを解説されていました。

コロナ禍で、大勢の人が集まる講演会は非常に少ないのが現実です。今回の講演会もWebでの配信でした。乳癌患者さんの骨粗しょう症ケアは重要であることが再認識できました。また乳癌患者さんの骨粗しょう症ケアを総合病院で行うことに限界があることも分かりました。当院では乳癌の特徴も踏まえつつ、今後も基幹病院と連携して骨粗しょう症治療に当たれればと思います。乳癌の方(過去に乳癌治療をした方も含みます)で、骨粗しょう症の評価を受けていない方は一度、検査を受けてみるのも良いと思います。