骨粗しょう症の勉強会に参加しました

ブログ 2022年10月22日

先日、骨粗しょう症の勉強会に参加しました。参加した勉強会は骨粗しょう症の専門の先生向けのもので、三重県内では私も含めて2名の参加者でした。発表される先生から、最新の研究内容の紹介や海外を含めた新しい知見の解説をして頂きました。少し紹介させていただきます。

さて、近いうちにアバロパラタイドという新たな骨粗しょう症治療薬が使用可能になります。これは自己注射薬で、すでに海外での優れた成績が報告されています。このように骨粗しょう症分野でも、新しい薬剤、新しい考え方が出てきます。

背骨の骨折後、再度、背骨の骨折が生じやすいことはよく知られています。背骨に限らず、骨折は一度生じると、次が生じやすくなることから、“骨折の連鎖”、“骨折のドミノ”と表現されています。“期間”という観点から見ても、背骨の骨折を生じて1年以内に再度背骨の骨折が生じやすいことも知られていました。最近のトレンドとして、骨折直後には骨折が生じやすいという研究成果がいくつも報告されています。”Imminent fracture risk (差し迫った骨折リスク)”というワードが使用されるようになっています。少し論文を紹介します。

①骨折した1年以内には約8%の人が、2年以内には約12%の人が次の骨折を経験する(Wong RMY et al. Osteoporosis Int 2022)。

②手首の骨折後4年以内に14%の人が次の骨折を経験する、骨折部位としては背骨が47%、手首が37%などであった(Jung HS et al. Osteoporosis Int 2021)。

③骨盤骨折後2年以内に41%の人が次の部位の骨折を生じていた(Smith CT et al. JBJS Am 2021)。

これらは最近報告されたものです。こういった情報もあり、重症の骨粗しょう症患者さんには、より治療効果の高い骨形成促進薬をまず使用しましょう(Anabolic first)という考え方が広がりつつあります(Curtis EM et al. Aging Clin Exp Res 2022)。つまり、最初に強力な治療をしましょうという考え方が広がりつつあります。病気が変わりますが関節リウマチの治療の歴史も今の骨粗しょう症治療の歴史に似ています。20年以上前だと思いますが、その頃は弱い治療から始めて、徐々に強い薬にしていきましょうという考え方でした。私が医師国家試験を受ける20年前には、そういった考え方は転換期にあり、できるだけ早くリウマトレックス®というような強力な薬剤を使用しましょうとなっていて、今やそれが当然となっています。20年間で関節リウマチの治療薬は多くの種類が使用できるようになり、治療成績が飛躍的に向上したこともあり治療方法(治療戦略)は20年前とは全く異なっています。今後、骨粗しょう症に関する研究が進んでいくと、最初にできるだけ強い治療をしましょうという概念が当たり前になるかもしれません。

勉強会では多くの内容に触れられていました。もう一つ、皆さまに紹介させていただきます。それは、顎骨壊死(顎骨骨髄炎)と骨粗しょう症治療の関係についてです。10年以上前に抜歯を行う時に、骨粗しょう症治療薬をお休みしましょうという考え方がありました。当初は抜歯+骨粗しょう症治療薬が、顎骨壊死(顎骨骨髄炎)の発生に関係するのではと考えられていました。明確な根拠もなく出てきた概念で、これが急速に広がったことに、今から考えると恐ろしさすら感じます。その頃でさえ、ビスホスホネート製剤の性質上、2-3カ月休むことがどのような効果をもたらすのか疑問の声もありました(この薬剤は、すぐには効果が切れません。そのため2-3カ月休んだところで何が変わるのだという意見がありました)。いくつかの研究がなされた現時点においても、抜歯時に骨粗しょう症治療薬を休むことのメリットが明確ではないことが紹介されていました。むしろデメリットが報告されています。顎骨壊死(顎骨骨髄炎)は骨粗しょう症治療を受けていない人にも生じていること、顎骨壊死(顎骨骨髄炎)の発生に関して、最近では“骨粗しょう症治療“より“炎症”がキーワードになっていることが紹介されていました。つまり顎骨壊死(顎骨骨髄炎)の発生に、歯周病や根尖病巣(歯の根っこの炎症)といった“炎症“を引き起こす病気の存在が発生に関係していることが紹介されていました(ただ、ビスホスホネート製剤が全く無関係という意味ではありません)。なお、骨粗しょう症薬の中で、顎骨壊死(顎骨骨髄炎)に関して話題になるのはビスホスホネート製剤という薬剤が大半です。デノスマブという薬剤も問題になりますが、私が発表した論文などもあり、デノスマブの休薬は危険という考えもあります(Niimi R et al. Osteoporosis Int 2018, Niimi R et al. Arch Osteoporosis 2020)。

診察室で骨粗しょう症の薬を飲んでいる患者さんから歯の治療をしても大丈夫でしょうか?という事をよくお聞きしますので、今回ご紹介させていただきました。