院長が作成した和文論文が、「別冊 BIO Clinica」に掲載されました。今回は、アバロパラチド(商品名はオスタバロ®です)に関する短期治療効果の論文です。骨粗しょう症が改善し、骨折を予防するためには薬物治療は欠かせません。食事や運動療法もありますが、加齢性の変化を食い止める、あるいは改善する(若返る)ことは残念ながら難しく、薬物治療の効果に比べると見劣りします。プロのスポーツ選手がどれほどトレーニングや食事を節制しても引退することを考えて頂ければ、老化に対してそういった努力が完全ではないことがわかると思います。また、子供が食事を特に注意しなくても、男児は男らしく、女児は女性らしくなっていくことも食事の効果が限定的で、生命のプログラムがいかに強固なものかがわかると思います。
医学において薬物治療の骨折予防効果は大きいです(食事や運動療法を否定する訳ではないですが、効果の大きさは薬物治療の方が大きいですし、今後、薬剤は進歩していきますので、ますます効果の差が開くと思います)。様々な分野で新薬が登場してきますが、骨粗しょう症の分野でも、数年に一度くらいのイメージで新薬が発売されます。新薬は、基本的に過去のものに比べて効果や副作用が優れていないと発売されませんので(わざわざ見劣りする薬剤を発売する意味がないですからね)、新薬は過去のものに比べて、販売に値する長所があります。
今回、論文にしたアバロパラチド(オスタバロ®です)は、2022年11月に発売された重症骨粗しょう症者向けの治療薬です。健康保険で治療を受けるためには重症骨粗しょう症と診断される必要があります。オスタバロ®は自己注射製剤で18カ月間の使用期限があります。自己注射製剤はハードルが高いですが、実際に手に取ってすると簡単です。4カ月の短期での治療成績ではありますが、発売前に行われた臨床試験と同等の効果が確認できました。副作用は、気分不快や頭痛などがあります。ただ、実際にやめる理由の多いものが、やる気がなくなった、“治療行為に伴い副作用を感じる”ことです。“治療行為に伴い副作用を感じる”のは自己注射製剤では特に多い印象があります。例えば、添付文章をよく読んで、自分の体に変調がないかを心配して、当てはまるものがあれば副作用に違いないと考えることがその典型例です。添付文章に、倦怠感とあった場合、倦怠感が生じたから全て薬剤による副作用化というと、そうではありません。副作用で倦怠感を感じる人もいるし、たまたま倦怠感が別の理由で出ることもあります。注射に伴う倦怠感は注射に伴う訳ですから、注射して1週間後に倦怠感が出たなどは、凡そ副作用とは考えにくいです。ただ、実際、そのように思われ、中止する方がいます。多くの薬剤で添付文章の副作用に書かれているものは多岐に及びます。それを見ておれば、多くの人が、治療していなくとも1年でどれか一つくらいは該当するだろうと思う内容です(ちなみにオスタバロ®であれば、悪心、動悸、頻脈、上腹部痛、嘔吐、腹部膨満、疲労、倦怠感、四肢痛、背部痛、めまい、頭痛、掻痒感、発疹、起立性低血圧、心拍数増加などが書かれています)。オスタバロ®の12ヵ月、あるいは18カ月の継続率は今後調べていきますが、過去の自己注射製剤は、製剤内容が異なっても、12ヵ月で65%、24ヵ月で50%程度です。骨粗しょう症の新薬が数年単位で登場しますが、最近は注射製剤が大半です。最近発売が開始された内服製剤は2016年のイバンドロン酸(ボンビバ®)だと思います。内服薬しかない時代は、重症者も内服薬を使用していましたが、近年、発売が開始された骨粗しょう症治療薬は重症者向けがほとんどで、重症者に対する治療に目覚ましい進歩があります。当院では、最新の知識も踏まえながら、重症者には重症者向けの薬剤の中で最適と思われるものを提案しています。院長は薬剤の効果だけではなく、薬剤の副作用についても多く研究してきました。困ったことがあればご相談下さい。
