骨粗しょう症治療薬は内服(飲み薬)と注射に分かれます。注射薬は内服にはできないことができるために発売されています。内服の方が簡単に使えることが多いため、製薬会社は可能な限り内服薬で作ろうとします。にも関わらず、注射薬が発売されている理由は、治療効果が強いということが大きな理由のひとつです。
例えば“テリパラチド”という薬は治療効果が高い注射薬ですが、口から薬液を摂取しても分解されてしまうので効果が全くありません。
注射の骨粗しょう症薬は製造コストがかかることから高価になるものが多くあります。また、国が健康保険での使用を認めた適応患者さんも“骨折リスクの高い骨粗鬆症”となっている場合が多く、すべての患者さんに使える訳でもありません。
では、“骨折リスクの高い骨粗鬆症(重症・重度の骨粗鬆症)”とはどういった方でしょうか?これについては、「原発性骨粗鬆症の診断基準2012年度改訂版」に例が示されています。簡単に述べると
1.腰椎骨密度がとても低い(若い人に比べて60%未満)
2.背骨が2ヵ所以上骨折している
3.背骨が骨折した場合、背骨の骨折の仕方がひどい
となっています。では大腿骨の骨密度が低いとどうなるの?など、疑問がわいてきます。これについてはまた別の話題となるので今回説明は省略します。ここで大切なのは、骨密度で重症と判断する方法もありますが、重症度の判定には骨折の実績や骨折した際の骨の折れ方なども大切ということです。時々、重症の骨粗しょう症ですよと説明しても、骨密度が高いので納得して頂けない方がいます。また、他の医師に結果を見せて重症ではないと言われる方もいます。
骨密度の評価は完全ではありません。過去の多くの研究から、将来の骨折予測には骨折した実績の方が骨密度よりはるかに大切であることが分かっています。当院で重症の骨粗しょう症と診断している患者さんは、複数の骨折をしているために重症と判定している方が多く、骨密度の結果で重症と診断している患者さんは少数です。骨粗しょう症の治療を受けられている方で、この記事を読まれた方は再度ご自身の状態を見直すきっかけになればと思っております。