2020年2月15日四日市医師会にて骨粗しょう症と歯科治療に関する講演を行いました。歯の健康は全身の健康に大切です。そして、医科でおこなう治療の中には、歯に関係するものが多くあります。骨粗しょう症もその一つです。歯の本数が少ない人は骨粗しょう症の確率が高いことが知られています。そのため歯が多く抜けている人は骨密度検査を勧めています。
さて、2003年にMarx先生が“ビスホスホネート製剤”を使用すると顎の骨が悪くなると報告しました(顎骨壊死、あるいは顎骨骨ずい炎といいます)。この論文が正しいかは未だに議論があります。この論文が発表されるまでは、骨粗しょう症の治療をすると顎の骨も強くなり歯にも良いと言われていました。しかし、この論文をきっかけに骨粗しょう症治療と歯科治療の関係が微妙となりました。顎骨骨ずい炎の問題(混乱といった方がいいかもしれません)に拍車をかけているのが新聞やテレビ報道です。報道は読者や視聴者の興味を引く必要もあるため、内容が過激になりがちです。報道では、ビスホスホネート製剤を使用すると顎の骨が壊死するという論調が多くあります。しかし、これは間違っています。どの人でも口腔内にはばい菌がいます。現在はビスホスホネート製剤を使用すると顎の骨のばい菌感染がひどくなり骨ずい炎になっているのではないかと考えられています。顎骨骨ずい炎は骨粗しょう症治療をしていない人でも生じますので、ビスホスホネート製剤を使用している人に生じた場合でも、そのすべてが薬のせいではないのです。
医科と歯科の連携が少ないことが日本の骨粗しょう症治療の問題の一つになっています。この現状に危機感を覚える骨粗しょう症専門医は多くおります。ただ、歯科医師の知識量には随分差があり、歯科を紹介しても事実と異なる説明を受けるケースが多くあり、それを恐れる医師が歯科を紹介しにくくなっています。全国の一部の地域では骨粗しょう症治療に関して、行政の協力を得ながら医科と歯科の連携を強化しています。にいみ整形外科では、骨粗しょう症治療を開始する場合に極力、歯科受診をして頂きます。なぜ受診して頂くかというと、歯科受診により骨粗しょう症治療の副作用が減るからです。また健康な歯の状態を保つことが大切だからです。
今回の講演は、四日市歯科医師会に所属する さらの木歯科 深水先生より依頼を頂き実現しました。四日市歯科医師会は、顎骨骨ずい炎の問題をより正しく知り、また医師の立場を理解することで円滑に治療を行いたいと考える歯科医師が多くいます。今回の講演では、私自身も最新の知識を勉強し歯科医師の方に、①骨粗しょう症について②骨粗しょう症治療薬について③顎骨骨ずい炎について、講義しました。この講演には四日市歯科医師会に所属する開業されている先生、市立四日市病院などの基幹病院の先生に多く参加して頂きました。