変形性関節症と肥満薬の勉強会に参加しました

ブログ 2026年6月8日

肥満症と膝・股関節の変形 ― 新しい肥満症治療薬「ゼップバウンド®」について

先日、肥満症治療薬「ゼップバウンド®」に関する勉強会に参加してきました。

整形外科では、「膝が痛い」「股関節が痛い」という患者さんを多く診療しますが、その背景に“肥満症”が関係していることは少なくありません。

今回の勉強会では、京都の病院で関節外科を専門とされている医師から、肥満症と膝・股関節の変形(変形性関節症)との関係について学ぶ機会がありました。肥満症治療の進歩が、今後の整形外科治療を変える可能性があると感じた内容でした。

肥満が膝や股関節に与える影響

体重が増えると、膝や股関節への負担は大きくなります。その結果、以下のような影響が出やすくなります。

① 短期的な影響
 ・膝や股関節の痛みが出やすくなる
 ・痛みが強くなりやすい
② 長期的な影響
 ・関節の変形が進みやすくなる
 ・結果として、人工関節などの手術が必要になる可能性が高くなる
③ 人工関節手術後への影響
 人工関節置換術を受けた後も、体重負荷が大きいことでインプラント(人工関節)が摩耗しやすくなる可能性があります。

さらに近年では、「体重が重いから関節に負担がかかる」という機械的な問題だけではないことも分かってきました。脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積すると、炎症や関節変形を進めやすい物質(サイトカインやアディポカイン)が放出されることが知られています。つまり肥満は、“体重による負担”だけでなく、“体内の炎症”という生物学的な影響によっても関節に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

「肥満」と「肥満症」は違います

一般的に肥満は、BMI25kg/m²以上を指します。

一方で肥満症とは、肥満に加えて健康障害がある、または将来的な健康障害リスクが高い状態を指します。

代表的な健康障害として、

 ・糖尿病などの耐糖能障害
 ・脂質異常症
 ・高血圧
 ・高尿酸血症・痛風
 ・心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患
 ・脳梗塞や一過性脳虚血発作

 などがあります。

そして整形外科領域では、

 ・膝の変形
 ・股関節の変形
 ・背骨の変性疾患

も重要な関連疾患です。

「痩せれば良い」は簡単ではありません

膝や股関節の変形治療には、

 ・薬物治療(内服・外用・注射)
 ・体重減少
 ・装具(サポーターなど)
 ・リハビリ
 ・手術

があります。

特に体重減少は重要ですが、膝や股関節が痛い方にとって、「運動して痩せる」は簡単ではありません。歩くだけでも痛みが悪化することがあるためです。

また、肥満症では、「頑張りが足りない」「意思が弱い」という問題ではなく、医学的に体重が戻りやすい仕組みがあることが分かっています。

体重が減ると、身体はそれを危険と判断し、エネルギー消費を抑えたり、食欲を増やしたりして、元の体重に戻そうとする“防御反応”が起こります。さらに、ホルモンや代謝異常が関係している場合もあり、自己流の食事制限や運動のみでは十分な改善が得られないことがあります。

新しい肥満症治療薬「ゼップバウンド®」

最近、肥満症治療は大きく変わってきています。その代表が、チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド®)です。

これは週1回、自宅で自己注射するタイプの薬で、食欲を抑え、減量をサポートします。

これまでの肥満治療では、食事療法や運動療法が中心でした。しかし、十分な効果が得られない方も多く、患者さん自身が苦労される場面も少なくありませんでした。

ゼップバウンド®の登場により、見た目にも変化が分かるほど体重減少が得られる方が増えており、肥満症治療は大きく変化しつつあります。

今回の勉強会でも、「今後、膝や股関節の変形治療の考え方を変える可能性がある」と話題になっていました。ゼップバウンド®は通常、2.5mg/週から開始し、徐々に増量して維持量(10mg/週)を目指します。ただし、副作用や体調に応じて調整されます。

日本人を対象とした報告では、ゼップバウンド®10mg投与により、72週間で平均17.8%の体重減少が得られたとされています。平均92kgだった体重が約76kgまで減少した計算になります。

保険適応には条件があります

ただし、ゼップバウンド®は誰でも使用できるわけではなく、保険診療で使用するには条件があります。

例えば、

 ・高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれか1つ以上がある
 ・BMI27kg/m²以上で2つ以上の肥満関連健康障害がある、またはBMI35kg/m²以上
 

などが必要になります。

まずは生活習慣の改善、適切な食事療法、運動療法が基本であり、それでも十分な効果が得られない場合に検討される治療です。

当院での対応について

当院のある桑員地区では、現時点では桑名総合医療センターで処方可能と聞いています。

当院でも、膝や股関節の変形治療を行う中で、「肥満症治療が有効かもしれない」と考えられる患者さんには情報提供を行い、ご希望があればご紹介させていただきます。

膝や股関節の痛みは、「年齢のせい」だけではありません。体重や肥満症が大きく関係している場合もあります。気になる方は、お気軽にご相談ください。

※このブログは、院長が医学的内容を確認した上で、読みやすさ向上のためChatGPTも活用して作成しています。