7月20日、21日と津市で第38回日本臨床整形外科学会が開催されました。院長やクリニックスタッフが参加しました。三重県で整形外科が関係する学会が開催される事は、年に1-2回あります。多くは木・金の開催でクリニックの都合でなかなか参加できませんが、今回の学会では、日曜日と祝日に開催されましたので参加しやすい日程でした。
今回の学会で、院長である私は4回の発表の機会がありました。2回は、学会から依頼を受け、セミナーを担当しました。また1回はシンポジウムでの発表でした。そして最後の1回は一般演題でした。発表回数が多く、様々な参加者にねぎらいの言葉を頂きました。準備はある程度大変でしたが、発表のためには勉強も必要で、よりより医療のために良い機会でした。また、特にセミナーを聞いて頂いた先生方からは、明日からの骨粗しょう症治療に役立つとの言葉を多くいただきました。
セミナーは60分の時間を頂き行いました。1日目のセミナーでは重症骨粗しょう症に対する考え方、治療薬選択などの説明をしました。2日目のセミナーでは、非重症骨粗しょう症に対する考え方、治療選択、グルココルチコイド誘発性骨粗しょう症について解説しました。グルココルチコイド誘発性骨粗しょう症は、以前はステロイド性骨粗しょう症と呼ばれたいたものです。グルココルチコイド誘発性骨粗しょう症は、一般的な骨粗しょう症とは大きく異なるものです。そういった点も説明しました。
シンポジウムは、顎骨壊死をテーマに、そうそうたるメンバーに加えていただき討論しました。顎骨壊死は骨粗しょう症治療中に生じるとされ、骨粗しょう症治療薬の副作用と当初は考えられてきましたが、研究が進むについて感染症などが原因のあることが考えられています。さまざまな議論を重ねた有意義な90分でした。
一般演題は、重症骨粗しょう症向けの治療薬の治療成績について報告しました。いくつか質問を頂きました。
学会の魅力はいくつもあります。知らない先生に出会えること、知らない知識が学べることです。今回の学会では、私が大学院の時に指導いただいた先生や私の同級生が発表していました。二人とも骨軟部腫瘍という分野のエキスパートです。大学病院に勤務していますが、大学病院の業務は診療に加えて、研究、教育もあります。そこに“医師の働き方改革”が推進され、残業がしにくい環境になり、対応するために様々な問題が生じていることを解説していました。特に、診療に関しては、大学以外に振り分けていくことが大切な反面、なかなかそれを受け入れる体制が整っていないことを聞きました。私が医師になった時は、“24時間働けますか”ではないですが、一日中病院に行くことが多かったのですが、時代の変化もあり、今は変化していっています。例えば、患者さんや家族への説明に関して、以前は、“家族に仕事があるから、○○時にして欲しい(夜です)”という話があり、医師が時間調整していましたが、現在は、医師の勤務時間内に家族が調整して来てもらうように病院として取り組んでいるそうです。緊急のことが多い分野の医師の成り手が少ないのも問題の一つになっているそうです。メディアで報道されている話を学会で聞いたことに驚きました。
ご存知の方も多いと思いますが、昨今、外科系の不人気ぶりが顕在化しています。ちょうど少子化のように、すぐに対策を打たないと、時間の拘束が長い・緊急が多い外科系の医師(場合によっては内科系も)はどんどん減っていきます。その結果、医療体制の維持が大変になることが予想されています。これは、各医師の問題ではなく、時代の変化に、医療体制の変化がついていけないのだと思います。
その他に、人工関節のセッションも興味深く聞きました。膝や股関節の変形が進むと手術の治療方法では大きな改善が出来なくなってきます。各時代で様々な工夫がなされ現在に至っています。この10年間は、ナビゲーションなどをはじめとした医療支援技術の開発が著しく、結果、正確に安全に手術が行えるようになってきているという発表でした。ロボット支援手術も三重大学で多く行われています。こういった技術を使用して行った手術の結果は、既に多く発表されています。今後は20年以上の長期にわたる評価を知りたいところです。
今回の学会では、様々な分野の話を聞くことが出来ました。明日からの診療に役立てられたらと思います。
