本年も終わりますね

ブログ 2024年12月31日

本年の残りわずかとなりました。毎年いろいろなことが起こり、平穏な年はないと思います。年末にかけてインフルエンザやコロナなど流行性の感染症が猛威を振るっています。感染症が絶滅できることはないでしょうが、少しでも収まればと思います。

医療を取り巻く環境も時代と共に変わっていきます。最近では“直美”という言葉がマスメディなどで報道されています。医学部を卒業した後にある2年間の初期研修を終えてすぐ、一般の医療機関での研鑽を積まないまま美容医療に流れることを指すそうです。“そして直美“の医師が増加していて、医療界全体でも大きな問題になっているそうです。

医師になり、どの科を専門にするかは自由です。近年、救急や外科、産婦人科などの科が不人気になっているそうで、“直美“の医師が増加することで、担い手が少なくなるためでしょう。報道によれば、厚生労働省は制限をかける方向で調整しているそうです。コスパやタイパが悪い分野が敬遠されているのかもしれません。外科医の減少により、今までは多くの病院で受けられていた手術が、一部の病院のみで可能になるような集約化が図られると思います。医師を育成するために多大な税金などが支払われているという事実がある反面、職業選択に制限がかかる可能性もあるため難しい問題ですね。

その他、薬剤に関する問題も多くあります。私が医師になったころには、薬剤の供給が不足するということはあまりなかったように思います。ところが、最近は、何らかの薬剤を発注しても届かない状況が慢性化しています。現在なら、痛み止めの注射が数カ月不足しています。そのため、使用する薬剤を変更したりしています。

また、抗がん剤など、海外ではすでに使用できる治療薬が日本では使用できる見込みが立たない(製薬メーカーが発売する予定がない)薬剤も多くあります。これを“ドラッグ・ロス”と言います。日本では、薬価制度という制度があります。薬価制度は、国の医療保険で使える医薬品の価格を決める仕組みのことです。社会常識では、商品を販売する価格は生産者が決定に多く関わります。ところが薬価制度は独特で、国が様々なことを検討して、製薬メーカーに販売価格を指定します。ただ、この価格は、概ね海外で同じ製品を販売した価格より安価です。例えば、骨粗しょう症治療薬の中で、高額な重症骨粗しょう症向けの製剤は日本ではざっくり3-5万円と数万円程度の販売価格ですが、海外では十数万円~、と桁が一つ違います。さらに本邦では毎年の薬価改定があり、頻繁に価格を見直すことになりますので(値段が据え置きのことはありますが、価格は毎年下がる傾向にあります)、開発や販売にかかるコストを考慮した時に、どうしても販売しにくい現状があります。そのため、日本から有力な薬剤が作られることは以前よりずいぶん減ったそうです。しかし、そのために、日本では安価にお薬が使用できる、そして、国民皆保険制度が持続できるといるメリットもあります。

さて、今年も多くの患者さんに来院して頂き治療してきました。また、今までに増して様々な分野のエキスパートの先生に外来に来て頂きました。月に10回程度は応援医師に来て頂きました。また、当院から紹介させて頂き患者さんも例年通り多くいらっしゃり、1000通以上の紹介状を作成しました。紹介患者さんが多いことは、当院の治療水準が高いことを表す指標と考えています。外傷や腱鞘炎など、日常診療で多く見られる疾患だけではなく、脊椎、人工関節、腱板断裂、スポーツ疾患も多くの手術患者さんを手術目的に紹介しております。最近では、小児の側弯をある病院に紹介させて頂きました。小児側弯の手術症例は少ないですがいらっしゃいます。残念ながら、医師が手術したほうが良いことに気づかないことが多々あり、側弯がさらに進行してしまうこともあります。紹介先からも、“いつも、小児側弯症を紹介して頂きありがとうございます”、と連絡を頂き、改めて、紹介させて頂き良かったと感じました。

院長である私が専門としている骨粗しょう症も、例年通り治療してきました。一生懸命説明しているつもりですが、治療の必要性を感じない人、治療が面倒になる人など、これらは世界的に問題とされていることですが、なかなか解決策が見つからずにいます。重症骨粗しょう症患者さんには、自己注射製剤や月1回の注射薬を勧めています。これらの製剤は年間200人ほど導入しています。クリニックでは全国有数レベルです。週2回の自己注射製剤の導入件数は、上市以来350人を超えました。また、最近発売された毎日の自己注射製剤は50例を超える方に使用されています。国内第三相試験(発売前の大規模試験)の結果を踏まえて、副作用の判断や治療効果判定をしていきますが、概ね、第三相試験の結果に似た状況と認識しています。

重症骨粗しょう症の方には、重症者向けの薬剤の使用を勧めています。ただ、それらの治療薬を選択されない患者さんも多くいます(厳しいですが、確率的にはこういった人は、多く骨折します)。自己注射の場合は嫌という理由が多く、他剤では高額になるという事が理由になります。また、前述したように治療の必要性を感じない方もいます。当院では、本邦を中心に様々な国のガイドラインや論文に沿って治療しています。内服の対象者である軽症の骨粗しょう症患者さんは注射製剤の患者さんの約3-4倍います。内服の適応患者さんには内服薬での治療を勧めています。

今年も残り少なくなりました。風も強くなってきました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。