クリニックの風除室には、南川朋宣先生の日本画を展示しています。当院の風除室に展示している作品は、季節をテーマに4部作になっており、季節に応じて作品を交換してます。そして、今回、当院に飾ってある作品を、南川先生の個展に出展することになりました。その代わりといっては何ですが、南川先生の出展しない絵を展示しています。現在、展示している作品は富士山をテーマにしていて、作品名は“金富士”です。
さて、南川先生の個展は、11/30(土)~12/9(月)に菰野町にあるパラミタミュージアムで開催されます。今回の個展は、“春夏秋冬”がテーマです。当院に展示している、4部作も、季節をテーマにしていますので、その作品が展示されることは、当院にとっても嬉しいことです。南川先生の作品の素晴らしさが、多くの人に伝わればと思います。
話が変わりますが、 多くの方が、“花鳥風月”や“雪月花”という言葉を知っていると思います。特に“花鳥風月”は、某社の蚊取り線香のCMで出てくる言葉ですね。ところで、“花鳥風月”や“雪月花”という言葉の意味は知っていますか?
院長である私は、高校生の時に、社会科は倫理政経という分野を勉強しました。倫理の分野では、様々な人や時代の思想を学んだり、どのように思想が形成されたのかに関する背景などを習います。例えば“花鳥風月”は、「雅なもの。移ろい行くもの。」と習いました。花・鳥・風・月、ただ単語を並べただけで、並べ方に深い意味はなく、それぞれが、“移ろい行く雅なもの”を表現しています。もっと言えば、物のはかなさを表現しています。
“平家物語”という作品の名前は知っている方が多いと思います。平家物語は、平家の栄華と没落を描いた物語です。平家の没落は、鎌倉時代の前、平安時代の末期です。平家物語の成立は、鎌倉時代初期と言われています。平家物語の冒頭は、「祇園精舎」という項で、有名な出だしだと思います。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
猛き者も遂にはほろびぬ、偏ひとへに風の前の塵におなじ。
『平家物語』第一巻「祇園精舎」より
祇園精舍の鐘の音には、諸行無常すなわちこの世のすべての現象は絶えず変化していくものだという響きがある。沙羅双樹の花の色は、どんなに勢いが盛んな者も必ず衰えるものであるという道理をあらわしている。世に栄え得意になっている者も、その栄えはずっとは続かず、春の夜の夢のようである。勢い盛んではげしい者も、結局は滅び去り、まるで風に吹き飛ばされる塵と同じようである。
Wikibooksより
「祇園精舎」では、滅びるという負の言葉も使用されていますが、言わんとすることは、“花鳥風月”や“雪月花”に類似しています。
当院では4部作全てを展示することはありません。もしよろしければ、個展で4部作を見て頂けたらと思います。その際に、春夏秋冬を通して、「雅なもの。移ろい行くもの。」を感じて頂ければと思います。